ポンコツ店長の奮闘記

店長の日々の出来事や葛藤の日記にしていきたい

コン アモーレ ペル イル クチーレ

テンチョです。


ジャケットって堅苦しい見た目に相応しい堅苦しい着心地ですよね。


何であんな窮屈で良く分からないディテールがある上着を着るんだろう?と疑問に思う人も多いですよね。
テンチョもたまにそのように思います。


ですがそれは今のお話で、クラシックミュージックも当時はポップスだったことと同じように、ジャケットも開発当時は最先端で、「何と着心地のいい上着なんだ」と思われたに違いありません。←予想。


そもそも今のジャケットは詰襟を開いた状態なんです。
詰襟はテンチョも高校の時に着ていましたが、苦しいし暑いしでカラーキーパーは早々に捨て去りました。
ホックも潰れてしまって留められる状態ではありませんでした。


お手持ちのジャケットの襟を立ててみると何となく原型が分かるかと思います。

詰襟ジャケットが快適に着れる状態に進化したわけです。



伸縮性に乏しい生地で仕立てられてあれだけの着心地を実現できていることが凄いと私は感じるんです。


例えば布帛(ふはく)のシャツやGジャンって意外に着心地が悪くないですか?
ごわごわしたり背中や肩、脇などが突っ張ったりします。

丁寧に仕立てられたジャケットは型崩れ防止の芯地が分厚く入っていたり、構築的なシルエット(ボディラインをあまり強調しなく、服がシルエットを作るような形)をしているのに、腕や脇などはあまり気にならないです。
むしろ脇腹やウエストや首回りが動作の邪魔をすることがありますが。



首から肩にかけてのラインと、肩から手首にかけてのラインが前向きに傾いているのが分かるでしょうか。

本来の人の体とはこういう形になっています。


着心地の良さの大半はパターンによるものですが、当然縫製技術があってこそ実現されるのです。

カーブに縫い合わせるのってそれなりに難しいと思うんですよ。

やったこと無いから知らんけど。


単純に考えて紙で挑戦してみます。


まずは同じカーブを描いてみます。



縫いしろらしきものを残して切り取ります。



縫いしろを折り込んで接合しようとすると、縫いしろの形が合いません。



無理にくっつけようとしても紙では無理です。



布はある程度柔らかいので何とか出来そうにも感じますが、縫い代をうまいこと処理しながら丸く縫うのはなかなか難しいでしょう。


例えば肩口の処理です。

アームホールの縫い付けはジャケットでも一番重要です。

いせ込といって、パーツの接合部同士の径が異なるものをギャザーのように寄せて縫っていきます。

この時おそらく下糸上糸のテンションにギャップをつけていると思います。


しっかりといせ込まれたスーツの肩はふっくらとして、少し肩口が凸凹しているのが確認できます。

ちなみに左2つのスーツは手縫いです。右のボルドーのオーバーペーンはマシンメイド。

見た目にはわかりませんね。


手縫いの良いところは1針1針に強弱やピッチをわずかに変えながら縫える点です。

マシンメイドだと同じテンションで同じピッチで針を落としていくことになります。



生地のグレードは右の物も相当良いものですが、左二つは更に良い生地です。


一般企業の新卒が給料2ヶ月分を全額ぶっこんでも買えません。

良いものというのは理解できますが、こんなもの需要あるんでしょうか。


それがそれなりに売れてるってんですから恐ろしいですね。


手縫いで仕立てられた貴重な生地のスーツが遥かヨーロッパから極東アジアで販売されるとき、その値段はいくらだったら妥当なのか。


10万と言われたらヨーロッパの手縫い職人は針を包丁に持ち変えるかもしれません。

欧米っぽいジョークが決まったぁ~!


コン アモーレ=愛を込めて

クチーレ=縫製

掲題のイタリア語を解決したところで結びと致します。



以上です。