ポンコツ店長の奮闘記

店長の日々の出来事や葛藤の日記にしていきたい

裄丈(ゆきたけ)

テンチョです。


「店長大変です!」
「なんだ?どうしたというのかね?」
「そ、それが袖丈ツメの直しが指示通り仕上がっておらず詰められすぎています!」
「な、なんだって!?」


早速お直し屋さんに連絡し見てもらうことに。
当該メンズシャツの買取をお願いしました。


先方のミスであることは明らかで、詰めすぎてしまうと再生もできないものですから、買い取ってもらうほかありません。


シャツではありますが1枚5万3000円でした。


まあ仕方ありません。
シャツの袖丈ツメは1枚2200円の工賃です。
ジャケットならば1着7000円ほどです。
高い工賃は仕上がりのキレイさと精度への対価です。


先方もそういったリスクを背負い工賃に乗っけてくるわけですから。


同品番のシャツを取り寄せて特急便で仕上げてもらい、お客様指定の納期には何とか間に合いました。



今回幸いだったことは、事前に元の寸法を測って記載していたことと、ツメる寸法を重視して指示していたことです。
これによりお直し屋さんの非であることが明らかでした。



男性シャツは裄丈という寸法を基本的には使います。
身体で言えば頸点から手首のくるぶしまでの外側の寸法です。
服で言えば肩幅の半分(半身)の寸法と上袖のカフスまでの寸法を足した長さです。

カッティングやサイズの異なるシャツであっても裄丈を合わせておけば基本的には袖丈が狂うことはありません。
余程特殊なカッティングでなければ試着しなくてもこの通り綺麗にカフスが上着の袖から出すように仕上げられます。

それにしても紫外線に晒されて老けた手になったもんだ。



しかしこの裄丈ってやっかいなことに、人によって測り方が異なり微妙なずれが出るのです。
一般的には肩幅÷2と袖の長さと足す測り方。
肩の曲線をどれほど上に膨らませるかが曖昧です。
テンチョは上に約2㎝と教わりました。
約って・・・。






テンチョのやり方はガサツなので折り曲げて一気に測ります。
このやり方の場合、人によってのズレは最小限になりますが、直線的に測っているので本来丸い身体とのズレが生じます。



更に生地をパンパンに伸ばして測る人もいますし、平面に置いてトントンと軽く叩いて馴らしてから測る人もいます。
これでも少しは変わります。



このように測り方が違うと若干寸法が異なるわけですが、そうは言っても0.5㎝程度。
仕上がりで0.5㎝(5㎜ね)の±は誤差として換算します。
今回起こった寸法のズレは2㎝ほど。
袖丈が2㎝違うと着用した本人はかなりのギャップを感じるでしょう。



因みに物凄く細かくツメ寸を指定するお客様が極稀にいらっしゃいますが、2㎜とかの指定をされても無駄です。
何故なら誤差の範囲に入っているからです。
伸縮性の少ない麻の平織生地でさえ素材の持つほんの少しの伸縮性があるので、それが働いただけで2㎜ほど伸びます。
2㎜を体感できる人は居ないでしょうね。


そこまで正確に縫製できないのは、生地に針を落とすときに穴が開くわけですがその分少し生地が撚れたり、チャコペンの太さ分だけ前後したりするからです。
これは仕方ありません。



5㎜は許容範囲と思っておいてください。



以上です。